子育て Q & A
 Q  3歳児(男児)のお母様からのご相談

私は今、子供を注意する(叱る)難しさを感じています。どこまで許していいのか。叱るといってもどのような注意の仕方(叱り方)をしたらよいのか。3歳の子供がどこまで理解できるのか叱られる事で子供はどんな思いをしてしまうのか、など対応の仕方、また自分自身をうまくコントロールする方法があれば助言いただけたらと思います。

息子は5〜6年の不妊治療の末やっと授かった子です。私にとって息子はとても可愛く大切な子供なのですが、時には怒鳴ってしまうことがあり、それからはただただ自己嫌悪。そんな時は何であんな態度をとってしまったのだろうか。怒鳴らなくてもよかったのに、心の中で『ごめんね』と繰り返しています。私がこんな態度をとっていたら息子は精神的に情緒面でも悪影響を与えてしまうのではないか、とても不安になります。こんな母親なのに「ママ」と寄ってくる息子を見ると自分がますます情けなく悲しくなります。

先日は、夜、歯磨きをしている時猫のまね?をして、床に落ちたものを直接口につけてなめている様子を見て怒ってしまい、それにぐずった息子は思ったとおり歯磨きをいやがり抵抗。最初はそれでも普通に声をかけていたのですが抵抗がすごく「いいかげんにしなさい」と怒鳴ってしまい、抵抗されたまま歯磨きを!やらなくてもいいかなと思ったのですが、油断すると虫歯になりそうなのが気になり。私も馬鹿です。自分でも息子のその行為だけに腹が立ち怒鳴ったのではなく、自分の中のストレスかなと感じています。

 A  まず具体的に猫のまねをした時のことについてお話しましょう。

お母様は『そんな格好をしてほしくない』と思われ、お子さんが猫のまねをした事自体をイヤだとお感じになりましたね。でも、相手は3歳の男の子。3歳という年齢は想像力を駆使し、いろいろなものになりきる年齢です。逆に言うと、この頃いろいろなものになりきって頭の中で現実と区別がつかなくなるくらい夢見る夢子ちゃんになっておかないと、想像力の貧しい子に育ってしまいます。それでもよいのでしょうか。

 このように書くと『えっ、そうなの』と思われるかもしれません。でも、子供のしている事はちゃんと意味があります。少なくとも発達の段階の中で、いろいろ表現し周りの者に伝えていると私は感じます。

 ですから私なら「わあ、かわいい猫ちゃんがいた。猫ちゃん、猫ちゃん。それは人間が歯を磨く時に使うものなの。食べ物じゃありませんよ。」

 「そうだ猫ちゃんにはおいしいお魚をあげましょう。」と言って指でお魚(実際にはない)をつまんでみせます。3歳の子ならすっかりなりきって「にゃお、にやお」とか言いながらお魚を食べるまねをするに違いありません。

 このあと

 「そういえば困ったわねえ。うちの○○ちゃんがいないわ。」「このまま歯を磨かないで寝てしまうとムシムシ歯ア歯になってしまうわ。

 (遠くに居る子に言うように)「○○ちゃん、○○ちゃん。」と呼びます。すると「はあい」とか言いながら立ち上がると思います。ここで、床に落ちている歯磨き粉を拭きます。

 生活の中で子供がギャアギャア泣き叫ぶことがありますが、このように多くの場合、泣かせなくても良いのに周りの大人が泣かせていると、私は感じます。

今回も、叱る場面ではなく「床に落ちているものを口にしない」という事を幼児に学んでほしい訳ですから何も怒る必要なんか無いのです。それより、3歳の猫になりきった子に、「人間の子なら歯磨きをしないと虫歯になる」ことを知らせるほうが大切なのではないでしょうか。

 もし、仮に猫になりきって人間の子に戻ってくれないようなら

 「虫歯になって歯医者さんに行く猫さんて見たことがないわねえ。人間の歯って虫歯になるとイターイって大変なの。冷たいアイスを食べてもイターイ!。おいしいお菓子を食べてもイターイ。

 お母さんはちゃんと歯を磨くから大丈夫だけれど、○○ちゃんはかわいそうね、磨かないときっとイターイになっちゃうものねえ。」

なんて言うと、ちゃんと解ってくれると思います。

 私はお母さんに抱っこされている生後数ヶ月の赤ちゃんでも一人の人間だと思っています。ですから、赤ちゃんの気持ちを大切に話しかけます。逆にやってはいけないことをしたら、「メッよ」と言います。幼くても表情を読み取る力を持っていますし、ちゃんと理解してくれます。

 まずは、何歳だからこんな事を言っても解らないと思うことはやめましょう。伝えたいことがあったら怒鳴らずに誠意を持って話してあげてください。

 

親子関係は文字通り親と子の双方が信頼しあうことです。でも、皆さんはご自分のほうからばかり関わろうとしてはいませんか。子供のほうからの関わりには鈍感なのではありませんか。

 ○○ちゃんは猫のまねをしてお母さんと遊びたかったのだと思います。子供の側のかかわりを怒るという形で拒絶されれば幼児は泣くのが当たり前です。どうぞ、子供の側の関わりにも受け止める心の余裕ができるように頑張ってくださいね。

さて、大人は皆幼い頃子供でした。が、その頃何をどう感じていたか覚えている人はほとんどいません。子供の心がすぐに理解できる大人は少ないと言えます。従って一方通行にならないようにするためには子供の心がどこにあるのか、大人のほうから歩み寄ることが大切なのです。

 

いかがでしょうか。今ご自分がいかに母親として素人だったかにお気づきになったかと思います。でも、だからといってご自分を責める必要はありません。だって、プロの母親になる学習をいままでしてこなかったのですから。でも、少しでも早く子育てのスキルを身につけられることが、今現在のストレスから開放される近道だと私は思います。

『良い母親になりたい!でも現実はほど遠い』その思いがストレスになってしまいます。でもそんなストレスを感じずに最初から楽しい子育てを行っている母親が居たら、それは奇跡に近いと私は思います。まずは良い意味で開き直ってください。その上でプロの母親になるよう努力なさることです。

3歳のお子さんの母親であってもプロの母親でないことに、ご自身のイライラがあるのではないでしょうか。このホームページ上の『子育てを成功させるために』をぜひお読みになって学習なさることをお勧めします。

所見  

お年を召してから授かったお子さんなのに『子育てがうまくいかないのは自分が悪い母親なんだ』と、ご自分を責めておられます。

 この方に限らず、怒ったり叱ったりすることで子供の心が傷つくのを恐れ、叱ることに罪悪感を持っている方、その結果、感情を抑えきれず怒ってしまうお母さんを見かけます。 これは怒ると叱るを混同した大きな間違いです。きちんと叱ることで自分をコントロールするようになり本来の自立心も育っていくのです。

 真剣に叱られずに育った子供は、自他の区別もつかず、自分がこう思っているときは人も皆そう思っていると思い込んでしまいます。その最たるものはストーカーですが、人の心を推し量ったり考えるように育たない子供が多いのは、幼児期の教育の問題があると言えます。

 どうぞ、怒ると叱るの違いをしっかりふまえ、犯罪などで社会に迷惑をかける子供にだけはしないよう、また、「子育てのスキルを身につけるのは難しいことではない」「子供とのコミュニケーションがうまく取れると毎日が楽しい」と思えるよう、プロの母親になる努力をなさってくださいませ。