子育て Q & A
Q 3歳と1歳のお子さんの母親からのご相談
 30歳代の主婦です。3歳と1歳の男の子がいるのですが、上の子を愛せなくて悩んでいます。上の子は未熟児で2ヶ月間保育器に入っていたせいか、かわいいと思ったことがありません。ところが下の子は手はかからずかわいくてたまらないのです。上の子は赤ちゃん返りもひどく、食事やトイレなど一人でできることを私にやらせるので、イライラしてつい怒ります。すると上の子は弟をぶったり、ベットから落とそうとしたりします。そこでまた私がかっとして「あんたなんか嫌い」などと傷つけるのです。こんな自分が嫌で、これまで3回自殺しようとしました。いずれも未遂でしたが、このままでは自分が死ぬか、子供を死なせてしまいそうな気がして、恐くてたまりません。現在は精神科に通院し、坑打つ薬を飲んでいますが、よくなりません。夫は仕事が忙しく、なかなか話を聞いてくれません。ほかに相談する相手もいません。どうすればいいのでしょう。

 

 読売新聞の人生案内7月5日付「上の子を愛せない」と悩みご自分を責め自殺まで図っている母親に対し、精神科の先生が「…いずれにしてもあなた自身の気分の波の激しさが関係しているのかもしれませんし、上のお子さんの未熟児の心配がきっかけなったのかもしれません。…ご主人にも相談に乗ってもらって…」というように答えています。もし、私が相談されたのなら次のように答えるでしょう。
 A 

「ご自分ばかり責める事はありません。二人以上お子さんをお持ちのお母さんならほとんどの方が、あなたと同じ思いを持っています。つまり、あなたは特別ではないという事です。

 上の子より下の子の方が可愛い。上の子のやる事がいつも気になって…。つい自分がイライラした時、下の子ではなく上の子にあたってしまう、と。

 母親にしてみれば、最初に生まれた子には『こう育ってほしい』という期待も大きく、初めての子育てという部分で思い通りに行かない、その為自分のいたらなさを感じる。が、どこかで『私ではなく、この子が悪い』と思いたい。また、どんなに邪険にしてもこの子は私のお腹から生まれた子、決して私をきらいになったりしない。という妙な自信もある。

 でもそれは間違いで、成長すればするほど、母親から心が離れていき、あとで修復不可能になってしまうのです。今からすぐにでも変えなくてはなりません。でもあなたはご自分の行為がいけないと解っているのですから、あとは努力するのみ。人は頭で理解できても心ではっきりと理解しないと変えることはできません。ご自分のお子さんが中学生になったとき、今あなたがお子さんに接しているように、お子さんがあなたに接するようになります。そう思ったらむやみにイライラをぶつけるなど出来ないはずです。

 でも、急には上の子を好きになれない。そんな時は、形からでも変えていくことです。まずは上のお子さんに毎日1回は「○○ちゃん、お母さんはあなたのこんなところ(できれば具体例を挙げて)がダイスキよ」と抱きしめながら言ってみましょう。漠然と「好き!」と言われても、『いつも弟とばかりべったりして僕の事はしかってばかりいるのに、そんなの嘘だ』と思われてしまいます。部分を叱る事で『お母さんは僕の事をちゃんと認めていてくれたんだ』と、安心感を持ち、素直になります。

 また上の子の見ている時に、下の子を叱りましょう。上の子は下の子が叱られるのを見て『自分だけが叱られるわけではない』と安心し、下の子を必要以上にいじめたり赤ちゃん返りしたりしなくなります。

 これは下の子にとっても必要な事です。下の子は上の子が叱られているのを見て『自分は、あんなことはしないように気をつけよう』と思うので、なかなか叱る場面がないと思います。でも「かわいいかわいい」ばかりで育てていくと、要領の良さから影で悪い事をするようにならないとも限りません。また、本気で叱られたことのない子は、幼稚園でお友達や先生に何か言われた時、必要以上に傷つく事がよくあります。下の子にとっても叱られるのは良い事なのです。

 上の子下の子ということより相性の問題もあります。昔から「親に似ない子は、鬼ッ子」と言われますが、親に似た子もまた鬼ッ子といえます。なぜなら、自分の嫌な面を目の前でやって見せるのですから、たとえ我が子でも、好きになれないのも無理はありません。こんな時は、好きになろうと努力するより、一歩引いて、一人の人間として我が子を見る事が大切です。顔や性格が似ていても、我が子は自分自身ではないのです。ある意味で突き放して見ましょう。

 我が子が自分の嫌だと思う面を見せたら、ご自分がそのせいで嫌な思い(損)をした時の事を思いだし、自己主張しすぎる子の場合「そんな言い方をするとお友達も皆いやだと思っちゃうよ。」根気がない子の場合「最後まで頑張らないと、素敵なものができないわよ。疲れたなあと思っても少しずつやればきっとできるわよ」というように話してみてください。

 我が子はいつまでも幼児でいるわけではありません。振り返ると、あっという間の成長と言えます。成長したその時、悔いても遅いのです。自分より身長が大きくなった我が子を想定し、今自分の言うことややっている事を子供はちゃんと聞いているし見ているという意識を持ってください。我が子を一人の人間として認め意思の疎通がうまくいくようになったら、必ず我が子の良さにも気づいていき、「かわいい」と思えるようになります。 

            福岡 潤子